あまい


今日も激務を追え自室で一人寛いでいる時だった。



 「キラっ・・・!!」


 「はいはい、どうしたの?」



 ベッドに腰掛けてただ本を捲って、ただ時間を潰していた。
 それほど読みたいとも思っていなかった本だから、シンが勢いよく部屋に入ってきたのと同時に、躊躇することもなく閉じる。
 その本をベッドサイドに置き、視線を僕の隣に座ったシンに変えると、思ったとおりの表情だ。
 
 悔しさに顔を歪めて。
 本当は泣きたいんだけど、それを必死に抑えている。
 
 思わず抱き締めたくなる、僕の好きなシンの表情の一つ。

 
 「レイが・・・っ!!」
 シンの口から出たその名前に、僕はシンに聞こえないように溜め息をついた。
 シンがこういう風に僕の所へ来るときは、大抵ルームメイトである彼との喧嘩が原因だったから。
 「レイが?」
 それが解っていても、優しく理由を聞いてやるのがシンの宥め方の一つ。
 「レイが、俺の格好はだらしないってっ!見苦しいって言うんだ・・・っ!!」
 「また、それは・・・。」
 素直じゃないなあ、と。
 そう思った。

 レイがシンに対して恋心を抱いていることは、艦の中では既に有名な話だったりする。
 それに気付いていないシンも相当な鈍感だと思うけれど、そんなところもまた可愛く思えたりする僕も相当重症だ。
 それはさておき今回レイは、きっとシンの着崩した軍服に邪な思いでも抱いたのだろう。
 それを素直に言えばいいのに、遠回しにし過ぎて口論になってしまった・・・というのが恐らくこの喧嘩の原因ということか。
 僕は思わず苦笑した。
 頭の中に、部屋で一人落ち込むレイの姿が見えたから。

 まあ決して、可哀相だとは思わないけれど。

 「酷いよなっ!!今までそんなこと言わなかったのに、今更そんな事言われても・・・っ!!」
 「そうだね。」
 「本当に、レイはいつも勝手なんだよっ!!口煩いし、全然優しくないし!!」
 「そうだね。」
 「俺は、折角同室になれたんだから仲良くなれたら・・・って思って頑張ってるのに・・・っ!!」
 「・・・そうだね。」

 最後の方の声が低くなったのが、自分でもわかる。
 
 シンは寡黙という訳ではないけれど、今日のシンはいつにも増してよく喋る。
 その分だけ怒りが激しいのだろう。
 何せシンは自分の中に溜めて溜めて、そして大きく爆発させるタイプだ。
 いつもは一度そうだね、大変だねと優しく優しく相槌を打って、抱き締めれば終わる会話が、今日は何度も続いている。
 
 ・・・嫉妬深い僕にとってその会話の内容がレイであることは、とても気に入らないというのに。

 「レイは・・・っ」

 そんな僕の気は知らず、シンは再びレイの名を口に出す。
 嫉妬深いけれど、それなりに我慢強い僕にも限度がある。
 相手が、片思いだとしてもシンに思いを寄せている人物なら尚更だ。
 そう何度と僕以外の名前を連呼されると、僕も気分が悪くなってくるというものだ。

 「シン・・・」
 「・・・な・・・・・・ぅわっ?!」
 
 未だに口を開こうとするシンの華奢な身体を、腰掛けていたベッドに押し倒した。


 「キラ・・・っ!?いきなり何するんだよ・・・っ!まだ話の途中だっ!!」
 「何って・・・お仕置き?」
 「・・・え?何で・・・?!」

 僕は仰向けのシンの身体の上に跨る。
 大きく見開かれた紅い瞳を見下ろしながら、シンとは違ってしっかりと止めていた自分の軍服の襟に手を掛けた。

 「何度もレイの名前ばっかり呼んで、僕に嫉妬して欲しかったの?」
 「な・・・何言って・・・」
 「嫉妬したよ。うん、嫉妬した。だって僕、嫉妬深いからね。」
 「・・・・・・キラ?」

 不安気に瞳を揺らすシンの頬を撫でて、微笑みかける。



 「我慢してたけどもう限界・・・覚悟してね。」



 その言葉にシンの身体が強張るのを感じたけれど、僕は手際よく構わずシンの軍服を脱がせていく。

 「や・・・っ、やめ・・・っ!!」

 シンが僕の手を止めようと暴れても、そんなものは気にならない。
 拒絶の声も無視して、シンの服を剥いでいく。
 自分でもいつも着ているから、どうすれば効率よく脱がせるかなんてそんなこと解っていることは当たり前で。
 
 ベルトを外し、上着とアンダーを取り去り。
 履いていた靴も、ズボンも下着も、一気に摺り下ろした。

 「・・・や、やだ・・・っ!・・キラ・・っ!」
 いとも簡単に一糸纏わぬ姿にされて、シンが羞恥心を感じない筈も無く。
 赤く染まった顔に、悔しそうに寄せられた眉。
 細められた瞳にはうっすらと涙が滲んでいる。

 それを見て僕は口元を緩め、食い縛られたシンの口元に、自分の指先を差し出した。

 「舐めて。」

 僕の言葉に、シンは小さく首を振る。

 「・・・いやだ・・・」

 「僕はそれでもいいけど。辛いのは、シンだよ。」

 いつもは時間を掛けて、十分に優しく解してあげるけれど。
 今日はそんなことしてあげるつもりはない。

 そう遠まわしにシンに告げると、真っ赤だったその顔はみるみると青褪めていく。

 「このまましちゃってもいいの?本当にしちゃうよ。」

 半ば催促するようにそう口にした。
 同時にシンの唇に、指先を触れさせる。

 「・・・・・・ん・・・っ」

 予想通り、シンは僕の指を口に含んだ。
 「・・・いい子だね・・・」
 恐る恐る指に絡められた舌。
 そろそろと指を這う舌の動きは、あまりにも稚拙で幼い。
 
 それに満足しながらもどこかもどかしくて、僕は二本目の指をシンの口の中へと捻じ込んだ。
 突然増やされた指に驚いたシンを余所目に、口内にある指を喉奥まで突き入れる。
 「・・・ぅ・・・っ・・・・・・」
 更に深く寄せられた眉は、息苦しさのせいだろう。
 舌の付け根まで入れた。苦しくない筈がない。
 
 それでも、止めてなんてあげない。

 「ちゃんと濡らさないと、痛いよ?」
 幼い子供に言い聞かせるようにシンに声をかけた。
 「・・・ん・・・・・・ぅ・・・・
 くぐもった声を出しながらも、僕の指に舌を絡めるその姿。
 それを見ながら、僕は空いているもう片方の手で、シンの白い胸にある突起に触れる。

 「・・・つ・・っ・・・ぅっ・・・」

 強く摘むように触れると、シンの身体は大きく跳ねて、何度も触れてやると耐え切れないのか僕の指に歯を立てた。
 「・・・・・・シン・・・」
 少し低い声で名前を呼ぶ。
 呼びながら突起を摘む力を強めた。
 シンはそれに一際大きく反応して僕の指を口内から押し出した。
 「・・・も、う・・・むり・・・っできな・・・」
 「うん。頑張ったね。」
 僕から顔を背けたシンの頭を優しく撫でると、シンの身体から幾分か力が抜けたのが分かる。
 その隙に、シンの唾液に十分に濡れされた自分の指を、前触れ無くシンの後腔へと挿入した。

 「ひっ・・っ!!」
 シンの口から声にならない悲鳴が漏れる。
 「痛い?」
 聞かなくてもわかるけれど。
 いくら僕の指をシンが一生懸命濡らしたとしても、肝心の場所が濡れていない。
 そこにいきなり二本押し入れれば痛いに決まっている。
 「・・・い、たぃ・・にきまって、だろっ!」
 僕は痛みに歪んだ顔をしているシンに、優しく笑いかけた。
 「そう。でもこれはお仕置きだから、しょうがないよね。」
 「ひうっ!!」
 入れた指をシンの最奥まで、突き刺す。
 悲鳴を上げたシンに構うことなく、自分の指を何度も後腔から出し入れした。
 「やっ!い、やだ・・ぁっ!あっ、んん・・っ!」
 奥に突き入れる度に敏感な所に触れてやる。
 「あっ、あっ・・そこ・・っ!!やだぁっ!!」
 触れるたびにシンの身体は大きな反応を見せてくれた。
 その顔は既に痛みは訴えていないただひたすら快感だけを訴える、シンの表情。
 それと同じくして、指を動かす度に、後腔からは濡れた音が響くようになってきて。
 「・・・うあぁっ・・!!」
 既に立ち上がっていたシンのそれを軽く握ってやると、シンは呆気なく僕の掌に精を吐き出した。
 「・・・はっ・・・ぁ・・はぁ・・・」
 「たくさん出たね・・・気持ちよかった?」
 「・・・いたかった・・・っ!」
 「嘘ばっかり。」
 それでも強がるシンの唇に僕は自分の掌に出されたシンの精液を掬い取って、塗りつける。
 「・・・や、やめろよ・・!」
 シンは心底嫌そうに眉を顰めて僕の指から顔を背けた。
 「自分のなんだから。」
 嫌々と幼い子供のように首を振るシンに、僕はそう言い聞かせる。
 「・・・いやだ・・っ!」
 しかし、シンがそう簡単に言うことを聞くわけも無く。
 僕は諦めて、未だ掌に残っていた白濁をシンの胸元に広げた。
 「・・・なっ・・・ひぁっ・・」
 自らの胸元に塗りつけられてシンは目を丸くしたけれど。
 僕はそれを余所目に、シンの胸元に舌を這わせる。
 「・・・ゃっ・・・ぁっ・・・」
 舌先だけでなぞるように舐めてやると、シンの身体が小さく震えるのが分かった。
 
 「・・・・・・キ・・・ラァ・・っ・・・」

 縋り付くような、鼻にかかった甘い声。
 そんな声でシンが僕の名を呼ぶ時。

 それは、欲しくて欲しくて堪らない時。
 「・・・どうしたの?」
 口元だけに笑みを浮かべて、僕はシンの胸元から顔を上げた。
 「も・・・っ!や・・ぁっ!」
 赤い瞳に零れだしそうな程涙を溜めて、シンは縋るように僕を見ている。
 「指だけじゃ我慢できないんだ?」
 やらしい、と耳元で囁くとシンは誰のせいだと言わんばかりに、きつく睨みつけてきた。睨まれてるのかもしれないけれど、赤い潤んだ瞳では誘っているようにしか見えない。
 一度達した筈のシンのものも再び立ち上がっている。

 僕はそれを見て小さく笑う。
 愛撫を待ち兼ねているように震えている、シンの身体。
 
 大事に大事に優しく触れて、鳴かせるのも好きだけど。
 こうやって焦らして焦らして、鳴かせるのも好きだから。

 「・・・・・可愛いね・・・。」
 思ったことを素直に口に出し、シンの震える唇に触れるだけのキスをした。
 優しく頭を撫でてやるとシンは薄らと瞳を開いて目元を綻ばせる。
 その目元にも優しいキスを送って、僕は身に着けていた自分の軍服を脱ぎ捨てた。
 全てを取り去ってシンと同じ生まれたままの姿になって。
 「シン。」
 名前を呼んで、その細い身体を抱き締める。直に肌に伝わってくる体温が心地好い。
 シンの腕も僕の背中に回り、ぎゅうっと抱き付いてくる。
 こうやって甘えられる瞬間が僕はとても好きだった。
 「キ・・・・ラッ?!」
 そしてシンが僕の名前を呼び終わると同時に僕はシンの身体を抱き締めたまま、自分の身体を仰向けに倒した。
 つまり、今までと逆の位置だ。
 僕がシンの身体の下に。
 シンの身体は僕の真上に。
 「キ・・・キラ・・っ?!」
 「欲しいんでしょ?」
 瞬時に赤く染まったシンの表情を、下から見上げた。
 その頬にそっと手を添えて、にっこりと笑ってやる。

 「じゃあ自分で入れて。」

 僕は微笑んだままシンにそう告げた。
 思ったとおりシンは一瞬何の事だか分からないといった顔をしたけれど、すぐに意味を理解して大きな目を更に見開かせる。
 「そ、そんなの出来ないっ!!」
 「じゃあ、ずっとこのままだよ?いいの?」
 「・・・うぅ・・・」
 シンは今にも泣き出しそうに眉を顰めた。
 「ほら。僕も手伝ってあげるから。」
 「えっ?!や・・っ!!」
 言いながらシンの秘所に、自身を押し付ける。
 「・・・このまま、ゆっくり腰を下ろすだけでいいんだよ?」
 「・・・っ!」
 幼い子供に言い聞かせるような優しい声色で言うと、シンにとっては大きすぎる羞恥なのだろう。唇を噛み締めて俯いていた。
 「・・・出来るよね・・・?」
 優しい声はそのままに僕はシンの腰に両手を添えて、言葉を紡ぐ。
 シンの顔色は変わらず赤い。
 それでも僕の身体の上に倒れこんでいた上半身を起こし、僕の腰の上に膝立ちになるような体制に自分から変えた。
 「・・・・・んっ・・・」
 そして消え入るような小さな声と共に、シンの腰がゆっくりと落とされてゆく。
 「・・・そう、いい子・・・。」
 「・・・っは・・・」
 徐々に僕自身が、シンの中に入っていくのがわかる。
 「・・あっ・・あ・・・」
 深くなっていく度に、シンの口からは小さな喘ぎが零れた。
 もう少しで全部入るな、と。
 そう思っていた所でシンの身体は止まった。

 「も・・・うっ、・・できな・・い・・・はいら、な・・・っ」
 
 シンはきつく目を閉じて、身体を震わせていた。
 その姿を可愛い、と。
 愛しい、と。
 純粋にそう思うけれど、今日の僕はいつもより少し・・・いや、かなり意地が悪い。
 「しょうがないな・・・。」
 シンの細い腰を、両手で掴むように触れる。
 そして更に深く繋がるようにと、僕は無理矢理シンの腰を落とした。
 「あああっ!!!」
 喘ぎとも悲鳴とも言えない声が漏れ、華奢な身体は僕の体の上に再び倒れこんだ。
 「あっ・・、あ・・・や・・・ひぅ・・っ」
 今までにない程深い挿入に、シンは僕の胸の上で手を握って耐えている。
 僕はシンの乱れた黒髪をそっと撫でた。
 「気持ちいい?」
 「・・・んん・・・っ」
 耳元でそう尋ねても、シンはやはり首を横に振るだけで。
 「全く・・・君って子は・・・」
 さっきは我慢できないって縋り付いてきていたと言うのに。
 「本当に、素直じゃないんだから・・・。」
 溜め息混じりに言葉に出して、まだ深い挿入に慣れていないシンの身体を小さく揺さぶった。
 「やあっ!!あっ!!」
 堪らずにシンが悲鳴を上げた。
 それに構わずシンの腰を掴んだ両手で、軽い体を何度も上下に揺らしてやる。
 「やっ・・!あぁっ・・・あ・・んんっ!!」
 何度も繰り返すうちにシンは自ら腰を振っていて。
 僕が手を動かすことを止めても、シンの動きが止まることは無く。

 「・・・はっ・・、やらしい・・・」

 僕の上で乱れるシンに、はっきりと聞こえるようにそう言った。
 「や・・っ!いう・・・な・・っ!!」
 腰を揺らしたまま、否定するように首を振る。
 同時に揺れる柔らかな黒髪。
 汗に濡れて頬や額に張り付いている様が、とても綺麗だと思った。
 薄く開いて見えた紅い瞳は誘うように濡れていた。
 僕は両手でシンの頭を引き寄せると、その瞼に夢中で舌を這わせた。
 「はっ・・・あ・・・」
 シンは動くことを止め、僕のキスを受け入れている。
 「シン・・・」
 「・・・っや・・・!」
 一度唇を離してシンの瞳を見ると、もう目が離せなかった。
 快感に濡れた真っ赤な瞳。
 堪らなく欲しいと思った。
 そう思ってしまうと身体は止まらない。
 舌でシンの瞼をこじ開け、その眼球にも舌を伸ばす。
 「やっ・・・ぁ・・・っ」
 シンの身体が小さく揺れた。
 僕はシンの瞳を味わうように何度も舌で撫で、無我夢中でシンの眼を貪った。
 他人の目を舐めるなんて初めてだし、今までこんなことしたいと思ったこともない。
 初めて触れたそこは信じられないほど甘く感じた。
 「・・・・・・あまい。」
 だからようやくシンの瞳から唇を離した時、思わずそう声に出てしまう。
 「・・・ば、ばか・・・!そんな訳あるはずないだろ・・・っ!人の目舐めるなんて何考えてんだよ・・・っ!!」
 「あまいよ。シンの瞳。」
 「・・・ほんと、ばかだ・・・ばかキラ・・・っ!!」
 「・・・シン」
 悪態を吐くシンの唇を、自分の唇で塞ぐ。
 「・・・んっ・・ふっ・・・」
 舌を絡めながら、僕は自分の上半身を起こした。
 「は・・・っ!」
 急に変わる体制にシンの口からは喘ぎが漏れる。
 ベッドの上に座った体制の僕の上に、繋がったままのシンが必死にしがみ付いてくる。
 軽く音を立てて離した、シンの唇からはどちらのものとも言えない唾液が、首筋まで流れ落ちていた。
 それを下からゆっくりと舐め取ってやると、シンの中は収縮して僕のものを締め付ける。
 その動きが、早く、と急かしているように思えて。
 「シンがいっぱい頑張ったから、ご褒美あげるね。」
 笑顔でシンにそう言って、前触れも無く繋がったままのシンの身体をベッドの上に倒した。
 「やっ・・・あ!!」
 白く細い両脚を自分の肩にかける。
 そして、僕は自分の腰を強くシンに押し付けた。
 「・・うっ・・・くぅ・・・・んっ!」
 歯を食い縛って快感に耐えるその顔が、可愛く見えて仕方が無かった。
 「・・・シン、かわいい。」
 シンにまた、ばかと言われる前に、僕は叩きつけるように激しく腰を動かした。
 「あっ・・あぁっ・・・っは、ぅあっ・・!」
 何度もシンが一番感じる場所を突くように動く。
 抉るように抜き差しを繰り返すと、先程まで悪態を吐いていた口からは絶えず喘ぎしか聞こえてこない。
 シンの性器自体には全く触れていないのに、先端からは蜜が溢れていた。触れたら今にも弾けてしまいそうなそこには、敢えて触れない。
 「・・・後ろだけで、イけるよね・・・・・・?」
 「・・・あ、・・・あぁっ!!」
 大きく動く度にシンの身体は面白いくらいに反応を見せた。
 「・・うっ、あ・・んんっ・・・も・・・ぅ・・・!」
 甘い声を出し続けるその身体を、射精を煽るように突き上げる。
 限界が近いのか、弱々しく僕の体を押し返そうとしてくるシンの手を取って、ベッドに縫い付けた。
 「・やあ・・っ!もう・・・だ・・めぇ・・・っ!あぁっ!」
 「いいよ、出して・・・」
 「あ、ぁ・・・い、ぅああああぁっ!!!」
 言いながら深く、強く、腰を叩きつける。
 限界を訴えていたシンの身体はその動きに果ててしまった。
 同じように既に限界だった僕自身も、射精の快感で締め付けるシンの中に吐き出した。
 

 それから暫くは、繋がったまま二人で乱れた息を静めるために呼吸を繰り返していた。
 「・・・は・・・ぁ・・・・はあ・・・・」
 「大丈夫?」
 「・・・・・大丈夫じゃない・・・っ、ばかキラ・・・っ!」
 「酷いな。シンだって気持ちよかったでしょ?」
 「・・・よくない・・・っ」
 僕はその言葉に軽く息を吐く。
 あんなに乱れていたのに、それでも強がる姿勢を崩さないなんて。そこが可愛いのだけれど、たまには素直に気持ちよかったと言われてみたい。
 そう言おうと口を開きかけた所で、シンが目を擦っているのが見えて眉を顰めた。
 「どうしたの?」
 「・・・・・・・・・目、痛い・・・・・・」
 言われてシンの瞳を覗き込むと、その瞳は真っ赤になっていた。
 「あ・・・舐め過ぎた?」
 心当たりのあり過ぎる僕は、軽く笑った。
 それを見てシンが怒り出すのもある意味当然のことだ。
 「ばか・・っ!!なんで目なんか舐めるんだよ・・・!!」
 「シンの目見てたら舐めたくなったから。また舐めてもいい?」
 「いやだっ!!」
 「ちゃんと目薬点してあげるから。」
 「絶対いやだっ!!」
 「僕もいや。大人しく舐められてなさい。」
 嫌だ、と頑なに言われると逆に我慢できなくなってしまうのは、しょうがないことだと思う。
 「シンが嫌がっても、お仕置きだし。」
 「・・・な・・・、や・・・っ!!」
 しょうがないよね。
 少し前にも言った言葉をもう一度告げ、シンの了承を得る前に軽く腰を動かして繋がったままのそこを軽く刺激する。
 それだけで敏感になっているシンの体は、驚くほどに反応を見せ始めた。
 「・・・もう、嫉妬なんてさせないでね?」
 耳元で小さく言ったその言葉も、聞こえているかどうかわからない。
 聞こえていたとしても、きっとシンはまた同じようなことをするのだろう。気分がいいことでは決して無いけれど、その度にこうしてお仕置きが出来るのならそれもまた、いいかもしれない。
 そんなことを考えながら、僕のせいで真っ赤になった瞳の淵にそっと口付けた。
 

 


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