さんにん家族 1 「・・・キラっ!お前どうするつもりなんだっ?!」 「どうするも何もないじゃないかっ!君はまたこの雨の中、この子を置いて来いって言うの?!」 「そうは言っていないだろうっ!」 「じゃあ何だって言うのさ?!」 アスランは溜め息を吐いて、キラの腕の中にある小さなものに目を向けた。 外は酷い雨で。 傘を持っていかずに買い物に出かけ、帰りが遅いキラの身を案じていたところにこの始末。 『アスラン・・・っ!!暖かいタオルと毛布持ってきてっ!!』 家に帰るなりそう怒鳴りつけたキラは、全身雨に濡れながらも腕の中に何かを抱え込んでいた。 『お前・・・っ、まさかまた捨て猫や捨て犬を・・・』 『いいから早くっ!!』 キラはよく捨て猫やら捨て犬をよく拾ってきていて。 今回もそれだと思い込んでいたアスランは、小さく息を吐きながらも急いで言われたものを用意した。 しかし、キラの腕の中から見えたものは、明らかに犬や猫なんかには見えない。 ・・・キラは、小さな子供を抱え込んでいた。 『・・・なっ!?キラ、お前・・・っ!!』 ・・・そして、冒頭に戻る。 「・・・この子にも帰るところがあるかもしれないだろ・・・」 「君はこんな雨の中倒れていたこの子に、帰るところがあるって言うの?」 「そんなことわからないだろう。」 「・・・それならいいけどね。僕は、そうは思えない。」 「・・・キラ。」 キラはお湯に濡らされた暖かなタオルで、腕の中にいる子供の頬を優しく撫でた。 雨に晒されていたせいで色をなくしていた白い頬が、徐々に色を取り戻していく。 淡い桃色に染まる頬。 それを見てキラはほっと息をついた。 少しだけ落ち着きを取り戻した声で、アスランに言葉をかける。 「この子が帰るって言うなら、僕はそれでいいと思う。でも、もしなかったらどうするの?」 「その時は、孤児院や・・・」 「嫌だ。」 「キラ・・・。」 頑なにアスランの言葉を拒むキラに、アスランは言い聞かせるように名前を呼んだ。 「俺達に、この子の面倒は見れないよ・・・。」 自分達はまだ18で。 第一、こんなに小さな子供と接したこともあまりないというのに。 それでもキラはアスランの言葉を肯定しようとしない。 「やってみなくちゃわからないじゃない。」 「お前なぁ・・・」 呆れるアスランにキラはアスランに鋭い視線を向け、 「アスランが嫌だって言うならいいよ。僕はここを出て一人でこの子の面倒見るから。」 と言い放った。 その言葉に驚いたのは誰でもないアスランで。 「本気なのか・・・っ?!」 「冗談に聞こえるの?」 鋭い視線はそのままに、キラは腕の中の子供を優しく抱き締める。 その様子を見て、アスランは再び溜め息を吐いた。 キラが一度決めた事を変えることは滅多にない。それを十分に分かっているから、今言っている事も全て本気だという事は良く分かる。 これは、俺も覚悟を決めないとな・・・ そう思って口を開こうとしたとき、キラの腕の中でその子は小さく身じろいだ。 「・・・・ん・・・」 「・・・・目、覚めた・・・?」 キラが優しく掛けた声に答えるように薄く開いた瞳は、宝石のような赤い光。 何度か瞬きをしてキラとアスランの顔を凝視する幼子に、アスランは膝を曲げ目線を合わせる。 「・・・君、名前は?」 二人の生活に、一人が加わったその日の出来事。
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